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#10
Object manipulation|今津景、新津保建秀、野沢裕、森千裕

2017年8月12日(土) - 9月10日(日)


 

#10
Object manipulation|今津景、新津保建秀、野沢裕、森千裕
2017年8月12日(土) - 9月10日(日)
協力:KAYOKOYUKI, Satoko Oe Contemporary, 山本現代

クロージング・レセプション
9月9日(土)18:00 ‒ 20:00

本展のタイトルであるObject manipulationとはジャグリングが拡大解釈された言葉です。直訳すると「物体を巧妙に扱う」や「物体を操作する」といったものになりますが、そもそも、ジャグリングは常に一つ以上の物が宙に浮いている状態を維持したまま幾つもの物を投げたり取ったりを 繰り返すものです。本展ではこの「物体」や「物」に焦点を当て、私たちが普段どのようにものを認識し、接しているのかを問うていきます。
今津景は人類が像として記録してきた膨大な画像データのタンクの中から絵画を制作しています。その対象は、古代エジプト時代に描かれた壁画から、現代のスポーツ衣類メーカのロゴに至るまでを範疇に収め、様々な時代における人類の営為によって生み出されたものに対して眼差しが向けられていきます。またその眼差しは、絵画という表象化システムの構造に対しても積極的に向けられ、時代ごとに展開されたきた絵画のシステムを横断するかのような画面が作られています。彼女はそうした絵画のシステムを通して、人類によって表象化されたものを再度、表象化しつつ、画像処理を行い、画面上で筆致によって像を歪めるなどの行為によって現前化させていきます。表象化されたものを再度、表象化する行為の中で自らの存在の主体化がどのように行われていくのかを探っているかのようです。本展では最新作となる絵画が展示されます。
新津保建秀は/landscapeというシリーズで、インターネット上に公開されている画像ないし、情報がパソコン画面に表示される間のデスクトップ上の画面をキャプチャーします。このインターネット上の情報はWWW(World Wide Web-世界中に張り巡らされたクモの巣)というサーバーに保存、公開されているものですが、このをwebページの観覧というかたちで、私たちは様々な情報を我がものとすることができます。このWWWのシステムを、現代の地球という惑星に張り巡らされた情報であり、様々な「世界観」を構築するものとして捉えた時、私たちが各々に把握していることにおいて個々人が抱く世界という対象の代理としての世界観、表象と考えることができます。新津保がパソコン画面に表示されるWWWを介した情報とそれが情報として獲得されるまでのわずかな時間を撮影する時、私たちが世界をどのように把握し認識するのか、そして認識や同定に至ってしまうまでの、名づけ得ない何かである可能性が提示されます。
野沢裕は写真を中心に活動を続けてきました。初期の作品、「Bring that Landscapes Here」では天井から吊るされ、風にたなびく布を映像で撮影、それを再び被写体であったはずの吊るされた布に投影します。彼はその作品で、実際に目の前に存在するはずの布と撮影された布の像を同語反復のように重ねることで、布という物の認識における同定性に揺さぶりをかけます。また過去のある時点に撮影された像と今そこに存在し、投影される布の現在性を一致させることで、過去が現在の一部であり、今という現在が瞬く間に過去へと移り行くという陽炎のような虚ろな現在性が提示されていました。そこには私たちが普段、当たり前に見ている光景に対して行われる、野沢の真摯な観察と精査の眼差しがみてとれます。本展では、入れ子状に展開される同語反復の中で物がどのように存在し、認識され、その認識を超えてものがどのように展開していくのかのさらなる試みが行われます。
森千裕は自らの生活の中にある身近なものや、彼女自身の観念的な世界に存在しているものを対象に絵画を制作しています。それらは実際に存在している対象として世間一般に共有される客観的なもののあり方よりも、森の個人的な経験から表象化されてきたものです。その表象化は森の個人的で観念的な世界の構築につながり、幼少の頃から延々と続けられた落書きなどを通して、描き親しんだものから新たに対象として選ばれ、描かれるものを加えながら拡大されていきます。そうした行為は、ある意味で自らの物語や世界を神話化していく事でもあり、絶え間ない改定の連続によって、その自己の観念的世界の解体と再生が試み続けられていきます。そしてその解体と再生の連続によって鍛えられた想像力は理性的な文節によって切り分けられた諸領域を超えて、新たなもののあり方を提案し続けていくかのようです。